カリン塔
遠くで汽笛が鳴っている。
その音は、風に乗ってここまでやって来た。
頼んでもいないのに、ここまでやって来た。

まっすぐ帰る気分ではなかったので、
なんとなく、
缶ビールを買って、近所のマンションの非常階段を昇る。
地上12階。
強風の中でビールを開ける。

沢山の建物、沢山の窓の明かり。
少なくとも、その窓の明かりの数と同じだけの人が、
その部屋の中で時を過ごしている。

家族の団欒。
残業。
一人ぼっちのテレビ。
「来年こそは」と、リベンジを計る仮面浪人。
恋人の帰りを待つ女の子。

そしてきっと、窓の数と同じだけの色々な思いが
あるに違いない。

それは、

幸せ?
悲しみ?
不安?
期待?
絶望?
安息?
焦燥?

少し雲が多い空はどこまでも拡がり、
地上12階に吹いた風と、
非常階段の手摺を撫でて流れていったこの空気は、
きっと、
ここから見ることのできない全ての窓とも繋がっているはずだ。

下界を見下ろす神様を気取るわけではないが、
なるべくならそこに、
笑顔が多けりゃ良いな。

そんな事を考えながら、
非常階段をゆっくりと降りていった。

さっきまで目線と同じ高さにあったJRタワーが、
いつのまにか見えなくなっていた。

窓の外は遠い街/ゲンドウ.ミサイル
[PR]
by twisted.nerve | 2005-04-06 01:47 | 雑文


<< ★trick ☆star★〜I... 素の表情が伝えること >>